2015年9月27日日曜日

9月26日付『東京新聞』朝刊に、最近話題の日本における落選運動についてコメントしました。その少々の注釈。

実際には、ここまではっきりと言い切っていないのですが、コメントとしてはこうなってしまったようです(汗)。少々注釈を加えておくと、重要ポイントは下記の2点です。

公選法の原則的な落選運動の考え方は下記のとおり、原則として選挙運動期間中に限られていると見なすのが一般的と思われます。

(インターネット等を利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者の表示義務)

第百四十二条の五  選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に、ウェブサイト等を利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者は、その者の電子メールアドレス等が、当該文書図画に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に正しく表示されるようにしなければならない。

2  選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に、電子メールを利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者は、当該文書図画にその者の電子メールアドレス及び氏名又は名称を正しく表示しなければならない。

ただし、総務省のガイドライン(http://www.soumu.go.jp/main_content/000222706.pdf)には以下のように書かれており、留保が必要になってきます。
※ 落選運動について
○ 公職選挙法における選挙運動とは、判例・実例によれば、特定の選挙において、特定の候補者(必ずしも1人の場合に限られない)の当選を目的として投票を得又は得させるために必要かつ有利な行為であるとされている。
したがって、ある候補者の落選を目的とする行為であっても、それが他の候補者の当選を図ることを目的とするものであれば、選挙運動となる。
 ただし、何ら当選目的がなく、単に特定の候補者の落選のみを図る行為である場合には、選挙運動には当たらないと解されている(大判昭5.9.23刑集9・678等)。
○ 本改正における「当選を得させないための活動」とは、このような単に特定の候補者(必ずしも1人の場合に限られない)の落選のみを図る活動を念頭に置いており、本ガイドラインでは、当該活動を「落選運動」ということとする。
○ なお、一般論としては、一般的な論評に過ぎないと認められる行為は、選挙運動及び落選運動のいずれにも当たらないと考えられる。

やや難しい言い方かもしれませんが、実質的な「落選運動」的な影響力をもった運動を、工夫次第で公選法上の「落選運動」には該当せず展開することはできそうな気がします。それが、公選法の精神にかなうものかといわれればむろん疑問は残ります。ただし、それは公選法の全般に見られる問題でもあり、早急に実効的かつ理解しやすい規制に改正する必要があるとは思います。

記事のコメントだけ見ると、「日本では落選運動はできない」と断言したようにも見えてしまうので、少々長くなりましたが、注釈を付けておくことにします。