2015年5月12日火曜日

地方創生の時代にこそ、改めて自治体PDCAの検証と再構築を急げ

最近、仕事で、自治体の事業をいろいろと紐解く機会が増え気づいたことがある。自治体PDCAの形骸化である。
1990年代後半から2000年代の前半にかけて、自治体の事業へのPDCAサイクルの導入が流行した。改めて確認するまでもないが、PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことで、業務改善と合理化を迅速に実現する手法である。ビジネス分野では一般的だが、90年代末の、自治体の緊縮財政、地方分権一括法に至る自治体事業の合理化のもとで導入が進められた。
当時は、「新公共経営」などとも呼ばれ、脚光を浴びたものである。その名残りで、今も総合計画や実施計画などのなかに、その文言を頻繁に見出すことができる。ところが、その自治体PDCAが、流行から10余年の歳月を経て、すっかり形骸化してしまっている。一度業務を実施し、5年後、10年後の、次の実施計画や総合計画で修正することを、普通はPDCAとは呼ばない。頻繁で、スピーディな改善を意図した手法だからである。そして、その必要性は現在も変わらない。
だが、自治体でPDCAサイクルを回すのは意外と難しい。業務単位が分割されており、ひとつの課を単位にしてみても、そのなかで横断的かつ共通の評価尺度がない場合も少なくない。また3~5年程度で職員の異動も頻繁に行われるため、個々人は既存業務に習熟することに手一杯になりがちである。最近は人員削減の圧力も強く、人を増やすのも難しい。
自治体業務でPDCAサイクルを回していくためには、職員個々人の力量に依存しない、つまり人が変わっても持続可能な仕組みづくりが必要である。具体的には要綱や要領への落としこみが必要だが、それらもあまり行われてこなかった。事業仕分けや事業評価も、ある一時点におけるスタティックなものであって、時系列での連続性は十分には確保されていないし、個々の事業の具体的な改善策の提案には至らないことが大半である。そして評価委員の顔ぶれも数年で変わってしまう。このように、自治体も、また評価する側も、PDCA実現のインセンティブに乏しかった。
だが地方創生によって、自治体の新事業が質量共に増加している。これを、現状のようにまともな評価と改善のスキームを持たないまま野放図に事業を増やしていくと、将来世代に大きなツケが返ってくることになりかねない。自治体事業をきちんと評価し、その質を高めていくためにも、改めて自治体PDCAの再検討と具体化のための仕組みづくりが求められているのではないか。