2015年5月30日土曜日

ネット選挙の「理念なき解禁」と同じ轍を踏まない18歳選挙権の導入と実践を

衆院政治倫理・公選法改正特別委員会で、選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公選法改正案、いわゆる「18歳選挙権」の実質審議に入ったことが報道されている。6月2日にも採決が行われる見通しのようだ。
18歳選挙権、審議入り 「若者の考え政治に反映」- 47NEWS(よんななニュース)
18歳選挙権、来夏適用へ 衆院委、来月2日に採決
大前提として、まず18歳選挙権自体は肯定されるべきものように思われる。世界的な動向を見ても、違和は少ない。ただし、日本の政治(理解)と有権者を取り巻く構造的な問題を看過するべきではない。
例えば、上記の記事には、政治家の「若年世代の考え方が政治に反映され、従来高齢世代を向いていた政治が若年世代のほうを向く」とある。これは明らかにミスリーディングだろう。昨日Twitterでこの話題を呟いていたら、「独身者の数が増えても、結婚する人の数が増えるとは限らないということですか?」というコメントをいただいた。言い得て妙である。
政治と政治家の権力の源泉である議席を直接規定するのは「(投票)率」ではなく「(得票)数」である。18歳に投票年齢を引き下げると、概ね200万人程度の有権者が新規に追加されるが、極端な少子高齢化が進行した日本では例えば団塊世代の1年分の人口にも及ばない。投票率も半分程度だが、そもそもオーダーが異なる。また既に以下のように論じてきたように、若年世代に限らず、そもそも日本には民主主義を理解するための道具立てやフレームワークを形成する機会も少ない。
社会に政治を理解し、判断するための総合的な「道具立て」を提供せよ――文部省『民主主義』を読んで(西田亮介)- Y!ニュース
「若者が投票に行かないから、若者向け政策が実現できない」という政治家を信用するな。(西田亮介)- Y!ニュース
このような文脈のもとで、安易に「18歳選挙権を解禁すれば、若者の政治参加、政治意識が変わる」という議論を展開することで、まったくの期待はずれに終わる可能性がある。2013年の公選法改正によるネット選挙解禁を筆者は「理念なき解禁」と呼んだが、結果はどうか。政党の広報費は増えたものの、現在では候補者や政治家のアクティブな利用も減っている。政治のパワーバランスや各政党の論調を見ても、おそらくは18歳選挙権は来夏の参院選から適用される。まさに憲法改正や安保問題も話題になっているが、意図しないままに現状の政治態勢を強化する可能性もある。どのように有権者の政治理解と政治参加を促進していくのかという問題を改めて考える機会なのではないか。