2014年3月11日火曜日

中小企業基本法に基づく中小企業支援を事業型NPOの支援にも適用すべき?

先日、国際公共経済学会の第2回春季大会が開催された。同学会の春季大会では、「政策VOTE」という政策立案コンペを、通常の学会報告に加えて取り入れている。政策提案を実施し、実務者と研究者がコメントして、優れた提案を投票して選ぶという企画だ(詳しくは下記エントリ等参照のこと)。
政策研究者が政策提言能力を磨く――国際公共経済学会次世代研究部会「次世代政策VOTE」の取り組み(西田 亮介) - Y!ニュース http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20130331-00024171/
政策研究と政策提案は似ているようで、大きく違う側面があるが、後者の能力を知的に厳しく磨くよい機会になっている。昨年度が第一回で、その設計からかかわったのだが、今年は「事業型NPO法人への中小企業基本法に基づく中小企業支援施策の対象範囲拡大の提案」という報告を行った。

中小企業のセーフティネット化(≒NPO化)と、NPOの企業化が同時に進むのであれば、すでに存在する多様な中小企業の支援施策については、事業型NPOへの適用を認めるべきではないかという提案だ。

震災復興や一部のビジネス・インキュベータで、運用のなかでそういった事例があることは知っていたが、公式にもこういった取組が始まっていた。

経済産業省を所轄として、中小企業支援を広く手がける独立行政法人中小企業基盤整備機構の事業がそうだ。以前は、「等」のなかに、NPO法人も含まれていて、裁量の範囲になってしまっていた。ところで、ご存知ない方も少なくないと思うが、日本では、ベンチャー企業支援から、商店街振興、農商工連携、共済と幅広い分野が、中小企業支援の支援施策に存在している。語感では「ベンチャー企業」と、「中小企業」はかなり異なるが、政策的には、同じく中小企業支援なのだ。そのなかで、中小機構は、資本金約1兆1000億円の巨大な組織として存在する。
中小機構:機構について: 中小機構の概要
http://www.smrj.go.jp/kikou/gaiyou/001182.html

その中小機構において、一部の中小企業支援事業が、NPOを対象として明記されるようになっていた。
中小機構: 平成25年度補正予算 創業補助金(創業促進補助金)公募のご案内
http://www.smrj.go.jp/utility/offer/075939.html
中小機構:経営支援: 助成金(地域中小企業応援ファンド【スタート・アップ応援型】)
http://www.smrj.go.jp/keiei/chikipg/fund/index.html
創業、第2創業に係る費用の3分の2負担や、長期間無利子で事業費を貸与するファンドなどの対象として、NPOが明記されるようになっていた。

中小企業支援施策の常で、制度が複雑で、とっつきにくいが(この辺りは、改善とアウトリーチ必須だろう)、各地の中小企業振興公社や中小機構の各地域本部等々に問い合わせれば、丁寧に説明してもらえるはずだ。

この他にも多様な投資減税や税額控除、交際費の損金算入等々において、中小企業のほうがNPOよりも有利になっている。NPOも収益事業については、法人税の対象となるので、納税主体であるから、優遇措置も同等にしてもよいのではないか(NPOを有利にする必然性は乏しいとしても、同等であってもよいのではないか)。

行革の文脈では、中小機構が必要か否かについても、議論されたことがある。しかし、働いている人もいる以上、すぐに潰すというのも現実的ではないだろう。むしろ、巨大な資源を持っているので、そのパフォーマンスを改善させていくという選択肢として十分にありえるはずだ。

また中小企業事業者数に対して、NPOの数は現状5万件に満たない程度で、事業型NPOとなるとさらにかなり少なくなってしまうので、中小企業とNPOでの資源の奪い合いにはなりにくいのではないか。

さらに事業型NPO向けの既存の支援施策(内閣府系列や地方自治体独自のもの)は、ノウハウや目利き不足等が理由で、傑出した一部の施策を除いたその大半は、十分に機能せず、それがまた事業型NPOのスケール拡大の阻害要因にもなっている現状がある。実態として、営利法人と非営利法人の性質が近づいている部分があるわけだから、支援メニューについても共有できるものは共有したほうが合理的だろう。

その意味でも、今回の中小機構の取組は肯定的に評価できるといえる。より広範に、中小企業支援施策が、事業性の高いNPOにも適用することで、事業型NPOのスケール拡大に貢献してほしい。